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東京都歯科医師会学術研修会参加報告

2010年2月11日東京都歯科医師会館で東京都歯科医師会主催の学術研修会がおこなわれました。内容は午前中が、★「非歯原性歯痛の診断と治療」で、昼にはランチョンセミナー(お昼ご飯をたべながらのセミナー)として★「抜歯、歯周外科処置時の抗血栓療法への対応」で、午後には、★「ビスフォスフォネートと顎骨壊死、歯科治療、口腔管理」でした。  内容が、興味あったり、もっと知りたいことでしたので参加してきました。  一般の皆さまも多少の知識があっても役に立つのではと思いますので、要約して簡単に報告しますので是非お読みください。

★「非歯原性歯痛の診断と治療」   

講師は日本大学歯学部口腔診断学教室教授の今村佳樹先生と慶応義塾大学医学部歯科口腔外科学教室講師の和嶋浩一先生でした。

内容ーーー歯の痛みを訴えて歯科に来院する患者さんのうち、いろいろ検査をしてみても原因がはっきりしない場合が多々ある。そのような時に今までの一般の歯科医は対応に苦慮していたことが多いのではなかったか。それは歯科としての本質的な問題である痛みに対するバリエーション(過去の教育)がいかに貧弱であったかの証左である。

口腔領域の疼痛を、歯もしくは歯周組織に起因するものと、周囲組織(咀嚼筋、頸部筋、顎骨、頸骨,副鼻腔、顎関節、血管、唾液腺等)に起因するものに分けた場合、前者を歯原性疼痛(歯が原因の痛み)、後者を非歯原性疼痛(歯以外の原因の痛み)と呼ぶ。原因不明の歯痛・口腔痛が歯が原因か、歯が原因でないかを見極めるには、関連痛という考え方を認識することが重要である。これを診断するためには、歯の診断ではなく、顎口腔の診断を行うスタイルに切り替えなければならない。

歯に原因のある歯の痛み(歯原性疼痛)はーー象牙質知覚過敏、歯髄炎、歯牙破折、歯根膜の病変(根先性歯周炎、辺縁性歯周炎、智歯周囲炎、歯根膜炎)、骨の病変(歯槽骨骨炎、顎骨骨炎、骨髄炎)

歯に原因のない疼痛(非歯原性疼痛)についてーー歯の痛みを訴えて慶応大学病院口腔顔面痛外来に来院した患者のうち歯が痛みの原因でない(非歯原性疼痛)患者の痛みの原因は、筋・筋膜疼痛が48%、持続性神経障害性疼痛24%、心因性疼痛10%、三叉神経痛8%、その他10%、であった。

1. 非歯原性疼痛(歯に原因がないのに歯が痛いと感じる痛み)として頻度の高い筋・筋膜疼痛について

咬筋、側頭筋、胸鎖乳突筋の筋・筋膜疼痛は歯痛として感じられます。三叉神経、頸神経が収束する三叉神経脊髄路核が感作され痛みを感じる。非拍動性の持続性鈍痛。患歯の特定が困難。「肩こりがひどくなると頭が痛くなる、そして歯も痛くなる。肩をもむと楽になって頭の痛みも歯の痛みも感じなくなる」というパターンの痛み。食事中には痛みがなく、食後に痛む。トリガーポイントの触診が診断のキーポイント。こういった例では、患者の多くは咬筋、側頭筋が機能性に肥大している。こういう患者さんには、かみしめていることが一番の原因だと説明し、かみしめないように指導します。また硬いものを咬まないこと、反対側で食事すること、筋の安静、負荷の軽減を指導します。対症療法としてスプレイ&ストレッチ、ホットパック、超音波、三横指開口ストレッチ、トリガーポイント注射があります。(トリガーポイントとは、筋紡錘内に存在し触診により索状硬結として感じ、自発痛あり、圧迫すると過敏に反応し、ジャンピングサインと呼ばれる逃避反応が起こる痛みを生ずる。)

2. 非歯原性疼痛として次に頻度が高い神経障害性疼痛について

発症メカニズムは中枢、末梢の知覚神経の機能障害により生ずる痛み。歯に分布する神経が神経障害性疼痛を引き起こすことにより歯に痛みを感じる。

*末梢性ニューロパシーはーーー疼痛感じる歯の視診、打診による異常なし。冷水等刺激に反応なし。長期にわたる灼熱感、一日中変化なし。 食事の影響なし。歯肉知覚審査(Allodynia)+、刺激残遺感覚+、診断的局所麻酔で疼痛ほぼ消失。 診断にはAllodyniaの存在が必要。Allodyniaとはストッパーの丸いところでさわるとジワーと痛いいやな感じを感じる。治療はステント等を用いて局所麻酔剤とカプサイシン(タバスコに入っているもの)と義歯安定剤とを混ぜて局所を覆う。

*中枢性ニューロパシーはーーー診断的局所麻酔で治らない。この治療に最も効果があるのは三環系抗うつ薬(TCA:アミトリプチリン)と言われている。三環系抗うつ薬は慎重に投与すべきで、特に高齢者では抗コリン作用(口渇、便秘)、心臓の伝達系への重大な副作用がある。他の点でも注意すべきことが多い。

*末梢性と中枢性の混ざり合ったものがある。

まとめ  ーーー歯痛は、歯が原因の歯原性と歯が原因でない非歯原性のものがある。さらに非歯原性疼痛には、1.筋・筋膜性歯痛と2.神経障害性歯痛と、ここには書かなかった3.心因性歯痛があります。日常の臨床では気をつけて診断していきましょう。また歯痛の患者さんがいましたらこのブログを読んで参考にしながら歯医者さんに行って的確な診断を求めてくださいね。

 

★「抜歯、歯周外科処置時の抗血栓療法への対応」

講師は大阪大学大学院歯学研究科統合機能口腔科学専攻高次脳口腔機能学講座 講師 森本佳成先生でした。

内容 ーーー循環器領域において、抗血栓薬を服用している患者さんが急増している。日本ではワルファリン(抗凝固薬)は100万人、アスピリン(抗血小板薬)は300万人が服用していると推定される。これらの患者が歯科治療を行う機会も増えている。これらの患者が受ける手術で最も頻度の多いものは抜歯である。一般の歯科医はこのような場合、今までは抗血栓薬を中断してもらってから抜歯をしていた。しかし、抜歯にあたりワルファリンを中止又は減量すると、約1%の患者に重症の血栓塞栓症が発症し、その大多数が死亡にいたるとの報告がある。したがって現在抗血栓薬を服用している患者の抜歯は以下のようにすることが望ましい。

*INR値<4であればワルファリン継続しながら抜歯しても後出血の発生率すくない。

*INR値<3であればそのまま抜歯して良い。

*急性炎症はおさめてから抜歯する。

*ワルファリンの場合の後出血には、電気メス、ゼラチンスポンジ(酸化セルロース)、縫合、保護床、ガーゼ圧迫を行う。

*ワルファリンの後出血では血腫をつくるので、これをちゃんと処理しなければだめ。

*抗血小板薬(アスピリン)の場合は圧迫だけでも止まる。

*ワルファリン+抗血小板薬(アスピリン)の併用の場合は、後出血は5日後位まではよく監視し対応する。

*鎮痛剤はアセトアミノフェンを使う。NADESは使わないようにする。

*歯周外科のソウハの時の後出血には酸化セルロースの綿を細くしてポケットに入れる。

まとめ --- 出血発症リスクはどのぐらいあるのか。全身的危険性はどのようにあるのか。ワルファリンかへパリンかをよく考えて、必ず担当の医師と連絡をとり対処を考えてから抜歯を行うのがよろしいかと思います。